二枚目俳優と三連休

 高柳の顔をもう一度よく見る。顔を赤くしてバツが悪そうに俯いている。
 この人って…なんて、可愛いの…!!
 そう思ったら、急にドキドキしてきた。この人と後2日も過ごせるんだ。ほとんど独り占め状態で。わあ、すごい。
 シメは関東風でいこか、と高柳がテーブルから立ちあがった。しっかり食べ終える頃には、高柳も平常運転に戻っていて、さなえはちょっとつまらなかった。
 後片付けをしてしまうと、高柳が提案がある、と言った。
「せっかく時間があるんやから。今日と明日、夕飯の後はイタリア語講座にせえへん?無理かいな」
 さなえはバッグの中身を考えた。1回目のイタリア語講座の後でこのマンションに来たので、教材は揃っている。3回の講座用の手製のプリントも、もう作成済みでバッグの中のファイルに入っていた。講座をやるのに問題はない。
「じゃあ、やりましょうか」
 講座の二回目は、イタリア語の日常会話の実践編だった。高柳の映画の台詞も、その中に入っている。他愛ない日常会話のうちは、すんなり進んだが、その台詞となると、一気に滞った。
 高柳が、台詞の言い方を、何度も変えて、これで変じゃないか、とさなえに問う。その繰り返しだ。さなえはその台詞のいろんなニュアンスをつかまえたいんだ、と納得した。さなえはできる限り、いい時はいいと言い、ダメな時はとことんダメ出しした。
 結構な時間が経った頃、高柳が、ぽろりと
「なんか、わかった気がする」
 と言った。さなえも、高柳の必死さにつられて緊張したので、この言葉にはどっと脱力した。テーブルに、頭をこつんと乗せて、よかったあ、とつい大きめな声で言ってしまった。
「すまん。オレ、のめりこんでしもてた。疲れたやろ」
 こん、と音がした。冷たいものが頬に当たる。テーブルに突っ伏したさなえの頬の横に置かれたのは、冷えた缶ビールだった。さなえは体勢を戻し、ビールを手にした。
「そう言えば、昨日も今日も、飲んでませんでしたね」
 高柳と2度目に出会った瞬と3人で飲んだあの時。高柳は美味しそうにお酒を飲んでいた。でも、今までお酒を飲もう、という流れにならなかった。時間はいくらでもあったのに。さなえは何でですか、と何気なくきいた。
「そらやっぱり…若い子に酔って崩れたところ、見せられへんやん」