二枚目俳優と三連休

「ずっとTシャツとジャージは嫌やろ。昨日着てた服は洗濯してるしな」
 そう言って、高柳は、さなえの上から下まで、じっと見た。
「うん。似合てるな。可愛いわ」
 そう言われて、さなえは頬が火照った。かあっと真っ赤になってしまう。
 バカみたい。こんなこと、高柳さんは言い慣れてるっていうのに…!
 結局、ワンピース2枚と、それに合うバレーシューズも買ってもらってしまった。高柳の部屋に帰って、皺にならないようにワンピースを1枚、ハンガーにかけた。もう1枚は今日、ずっと着て過ごすことになる。
 こんな素敵な服を着ておうちで過ごすなんて、贅沢…!
「ほな。打ち合わせ、行ってくるで」
 高柳が玄関先に行くのをさなえも見送りに出た。靴を履く高柳に、さなえが深々とお辞儀をした。
「あの、このお洋服と靴、ありがとうございます」
「うん?ええよー。おっさんこういうのしたい年頃やねん。オレが伊藤さんの立場やったら、もっとあれ買って、これ買ってって、言うけどなー。ま、そこまではオレも対応でけへんから」
 そう言ってぱたぱたとドアの向こうに行ってしまった。
 いないとわかっていても、さなえはもう1度お辞儀をした。

 高柳の部屋に1人になって、さてどうしよう、とさなえは思った。普段なら真っ先に本を読むところだ。バッグの中には、読みかけの文庫本もある。
 うーん…でも、せっかくこんな非日常な空間にいるのに、いつもと同じことするのってなんかもったいないような…
 整理整頓されたゴージャスな高級マンションの一室で、さなえ自身も美しいアンティークのワンピースを着ている。
 優雅に紅茶とか飲むべき?そう思ったさなえの目に止まったものがあった。

「ただいまー」
 夕方6時。高柳が帰ってきた。
「ごめんな。意外と打ち合わせが長引いてな。若手の役者の悩みとかも聞いてたもんやから…っと、どないしたん!」
 さなえはソファに座って、大粒の涙をこぼしていた。
「高柳さん…映画っていいれすねぇ…!!」
 さなえは高柳が行った後、何気なく棚にあった映画のDVDを観てみることにした。昨日の映画はよかった。自分にとっての非日常は映画を観ることだ、と思いつき、よさそうなのを1枚観た。すると、止まらなくなり、結局ぶっ続けで4枚観てしまった。
「何、観てそんなに…あ『クレイマー・クレイマー』か。そりゃ泣くわな」