二枚目俳優と三連休

 高柳が申し訳なさそうに言うので、さなえは慌てて充分です、と言った。半分くらい食べたところで、高柳がぼそりと言った。
「さっきなあ、うなされてたで。田島の夢やろ」
「あ…はい」
 隠しても仕方ないので正直に頷いた。
「そうか。まあ、ちょっと作戦会議が必要やな。うーん、会社はバレてるから、そっからつけられたら…まくのも限界あるしな。友達のとこに泊まっても状況は変わらんやろうし。警察は事が起こらんとなんもしてくれへんって有名やしな。うーん、ま、現状把握といこか」
 高柳は、さなえにスマホの電源を入れさせた。メールは125通きていた。着信も36回あった。予想はしていたが、やはりぞっとした。
 メールで『会いたい』という意味の言葉が繰り返し送信されていた。最後の方に一通だけ長いメールがあり、おそるおそるそれを読んでみた。
『さなえ。会いたいのには理由がある。会って話しがしたかったけど、ここで言うよ。僕は連休明けからフランスへ行くことになった。出張じゃない。フランスの支社で働くことになったんだ。多分、三年は帰ることができない。この間の出張は、その準備も兼ねていた。だから、さなえとのことに焦っていた。君は僕が水をかけた事で怒ってるんだろう。そういう子供みたいなところも好きなんだ。恥ずかしがらずに、僕と会ってくれないか』
 高柳も読み、言った。
「ぶは。こいつの中じゃ伊藤さんが恥ずかしくて会えへんことになってるで。すごい思い込みやな。さすがストーカーや」
 ほんとですね、とさなえもうなだれた。高柳が言った。
「そやけど、光明も見えてきたやん。3連休、終わったら、こいつ、フランスの空の下、や」
 そうか、とさなえも、はっとした。
「おう。この3連休、伊藤さんが逃げ切ったらええねん」
 さなえは、友人に連絡して、何とか3連休中、泊めさせてもらえないかときいてみた。しかし、友人女子のうち、2人は国内旅行で、もう1人は両親がやってくるから泊められない、とのことだった。
「どやった?」
 高柳の問いに、全滅です、とさなえは溜め息をついた。しかし笑顔を作った。
「大丈夫です。ネカフェとかで平気です。本を買って読んですごします」
「うちに、泊まればええやん」
「えっ。そ、そんな。だってご迷惑かけっぱなしで」
「オレならかまへんよ。伊藤さんとおると、おもろいもん」
「お、おもろいって…」