二枚目俳優と三連休

 高柳の目の色が変わった。それから深夜まで、高柳は色んな映画の面白さを語り、さなえはそれを聞き入った。さなえがその映画の原作なら読んだことがある、と言うと、また話が盛り上がった。
 
 窓辺にレースのカーテンがふんわりと揺れている。午後の光が窓から射しこんで来る。さなえはここはどこだろう、とまばたきすると、目の前のドアが開いた。
「さなえ、ここだったんだな」
 銀色のタキシードを着た瞬が言った。
「瞬ちゃん」
 駆け寄ろうとすると、ドアから女性が続けて入ってきた。純白のウエディングドレスを着ている。ベールがかかっていて、よく顔はわからないが、綺麗そうな人だ。
「俺達、結婚するけど、新婚家庭だからって遠慮するなよ。遊びに来いよな」
 にかっと瞬が笑って言う。晴れ晴れとした笑顔だ。
 つられて、さなえもにっこり笑った。
「うん。わかった。瞬ちゃん、お幸せにね」
 ちょっと前まではこの台詞を瞬の前で言えるか心配だった。でも、今日は言えた。心配していたけど、涙も出なかった。
 よかった。私、結構、気持ちの整理ができたんだ。今考えると、淡い受け身の恋だった。瞬を得るために努力したことなんかなかった。ただ瞬をまぶしく見ているだけだった。
 恋に、恋してたのかも…。
 ふっと笑うと、バタン、とドアの開く音がした。いつの間にか瞬たちはいなくなっている。はっ、と振り返ると一番会いたくない相手がいた。
「さなえ。見つけたよ」
 田島だった。会社帰りなのか、スーツにネクタイ姿だ。
「帰ってください。ひ、人を呼びますよ」
 田島は全く意に介さず、さなえに歩み寄ってくる。
「来ないで!」
 そう叫んで、目が覚めた。うっすら、汗をかいている。夢だったとほっとしたが、後味の悪い夢で気持がざわざわしている。起き上がると、ソファの上だった。タオルケットが一枚、掛けられている。
 そうか、昨日、映画の話で高柳さんと盛り上がってそのまま寝ちゃったんだ。
「おう、起きたか」
 ひょい、とさっぱりした顔で高柳がさなえを覗き込んだ。
「はい…」
「じゃ、飯にしよか。顔洗ってきいや」
 言われるがまま、洗顔し、テーブルにつくとサラダとミルクとトーストの朝食が並んでいた。
「悪いな、卵切らしててん」