二枚目俳優と三連休

 はあ、とさなえは感心した。さなえを今夜泊めてくれたのも、そういう経緯があってのことなのだろう。確かに来てすぐのカレーとか、下着とか、DVDとか手際がよかった。
 ちょっと待って。下着は…?!
 そこまで考えて、やっぱり女の子連れ込んだことあるんだ、とさなえは腹を立てた。しかし、自分が怒る権利はまったくない。でも何かイラッとする。
 何だか…変だ、私。
 自分の感情に戸惑っていると、部屋がふっと暗くなった。
「やっぱり映画は暗くして観らんとなー」
 大きなTV画面には新作DVDのCMが流れていた。その画面の光のせいで、高柳の表情が見えるくらいには明るい。
「高校の時さあ、兄貴の部屋にだけビデオデッキがあって。レンタルビデオ借りてきて友達4人と鮨詰めになって映画観たわ。エアコンついてなくて暑いのなんの。扇風機だけで必死になって観たなあ。何しろ金がないから映画館に行けへんねん。ホラーにスパイもんにアクションもの。ゴチャまぜやったけど、面白かったわ」
 本当に映画が好きなんだな、とさなえは思った。今更ながら映画をディスって悪かったな、と思う。そうだ、この映画観て、例え面白くなくても、褒めよう。いい映画だったって、言おう。退屈して寝たりしないようにしなくちゃ…!
 さなえが決意に燃えていると、本編が始まった。
 2時間後。
 さなえの決意は全く必要なかった。
 映画は、死ぬほど面白かった。
 エンドロールが終わって、高柳が、ぱっと部屋を明るくした。高柳がどやった?ときいた。さなえは、しっかり高柳に向き直って言った。
「すっ…ごく面白かったです!」
「そやろ?オレも、この映画好きやねん」
「あの、イルカを助けようとして連れ出すとこなんて、きゅんきゅんしちゃって」
「オレもそこ好き!でな、オレ、どっちかというとジャックよりエンゾ派やねん。たまらんよな、あいつ」
「私も、エンゾが好きです。あの人間臭いところがすごい素敵」
「な、この映画の後、エンゾ役のジャン・レノの映画が当たった訳、わかるよな。皆、エンゾに惚れてまうねん。ジャックもええけどな」
「あの…実は、私、ジャック・マイヨールの本を読んだことがあって」
「ほんまか!」