「俺は佳奈との時間が大切だから。そのためだったら、なんでもできるのに」

「……なるほど」

「だけど、佳奈は怒ってしまって。俺の気持ちは届かなかったんです」

「なるほどなぁ」



隣で腕を組み、頷きながら聞いてくれる先輩。

それは嬉しいしありがたいのだけれど。



「さっきから、なるほど、しか言ってないじゃないですか」

「あ、バレた?」



バレるっていうか、『なるほど』って言葉しか返ってこなかったら違和感しかない。

呆れてため息をつく俺に、急に真面目な表情を向けてくる先輩。

その真剣な目に、俺は思わずたじろいでしまう。



「お前、思ったよりガキだな」

「え?」

「そりゃ、佳奈ちゃんに振られるよな」



思いがけない言葉に言葉が出なかった。

完全に皿洗いの手も止まってしまう。



「藤崎の言い分はあれだろ。佳奈ちゃんのためなら、自分のことを後回しにできるってことだよな?」

「そりゃ、佳奈が笑ってくれるなら」

「そんなの、自己満足でしかねぇよ。佳奈ちゃんが怒るのも無理ないな」