「他に男ができたみたいです」

「それは前にも聞いた。その話になる前に、喧嘩とかしなかったのかよ」

「……しました」

「したんかよっ」



なぜかツッコミをしてきた先輩に少し呆れて、小さく笑ってしまう。

皿洗いをしている俺は手を止めないまま、隣で偉そうに立っている先輩に話し始めた。

独り言のようなものだ。

それでも、誰かに話を聞いてほしかった。



「喧嘩っていうんですかね……。佳奈が珍しく、寂しいって泣きながら言ったんです」

「なるほど」

「あまりにも寂しいって言うから、俺、言ったんです。……夢を追いかけることも、バイトもやめて、佳奈との時間を作るって」



佳奈に寂しい思いをさせてしまうくらいなら、叶うか分からない夢なんて諦めたっていい。

バイトは生活もかかっているから、辞められるか分からなかったけど、それでも俺は佳奈との時間も作りたいと思った。

だけど、佳奈はあのとき、泣きそうな顔をして怒った。