居酒屋でのアルバイト。

もう、佳奈はいないんだから、居酒屋バイトをやめたっていいのに。

支えてくれる人がいなければ、このまま掛け持ちで仕事を続けていても、体力的にも精神的にもきつくなるだけだ。



「はあ……」



仕事中だっていうのにため息がこぼれる。

そんな俺のため息に気づいたのか、同じ職場の仲の良い先輩が声をかけてくれた。



「藤崎ー。ため息ついてどうしたんだよ?」

「いや、ちょっと……」

「もしかして佳奈ちゃんに振られたのを引きずってんのか?」



うぐっ……。


図星をつかれて、俺は先輩を軽くにらむ。

そんな俺を見て先輩は面白そうにけらけらと笑う。


この先輩はデリカシーのかけらもないのか?

……まあ、先輩はこういう性格だからなぁ。

それに、佳奈の話は先輩によく話していたから、先輩も俺たちが別れたって報告聞いたら気になるんだろうな。



「振られた原因ってなんだったんだよ」



思い出したくないことを聞いてくる先輩。

早く自分の仕事に戻ってほしい。


そう思いながらも俺は、ついつい答えてしまう。