車のエンジンをかけた悠さん。

冷え切っていた車の中の温度が上がっていく。



「悠さん。どこに連れて行ってくれるの?」

「んー。佳奈と夜景が見たくて」

「夜景……っ!」



嬉しかった。

幸せだった。


男の人と夜景を見ることなんてなかった私。

初めての夜景を、大好きな悠さんと見ることができるなんて、私は幸せ者だ。


悠さんと一緒に過ごせる時間。

悠さんとの思い出が増えていくことへの幸せな感情。

私は悠さんとおしゃべりをしながら、ドライブを楽しんでいた。


山道を登ってくこと40分。

山頂に到着すると悠さんは小さな駐車場に車を停める。



「着いたよ」



悠さんの言葉に車を降り、ガードレールの近くまで走る。

思わず、身を乗り出すようにガードレールに手を置く。

目の前に広がるのはオレンジ色の光の海。



「すごい……。きれい……」



それ以外の言葉が出なかった。


山の上から街明かりを見ると、こんなにもきれいなんだ……。

空気は冷たいのに、心は温かくなる。