座ったはいいものの、どこからなにを話せばいいんだろう。

先ほど受け取ったハンカチで涙を拭きながら、この状況に戸惑ってしまう。

隣にいる彼が、せっかく話を聞いてくれるって言ってくれたのに、私が無言じゃ申し訳ないな……。


そう思いながら隣を見ると、彼のきれいな横顔が目に入る。

空を見上げていた彼は、私の視線に気が付いてこちらを見た。



「そういえば自己紹介してなかったね。俺は藤崎 悠、だよ」


「私は深山 佳奈……です」

「佳奈、か。素敵な名前だね」

「……悠さんも」



悠さんの優しい声、優しい言葉に、少し緊張していていた心が解けていくような気がした。


気が付けば、自分のことを話し始めていた。

悠さんは静かに、ときおり相槌を打ちながら聞いてくれた。


このとき、私はすでに恋に落ちていたのかもしれない……。