Re:スタート

そして、ついにドームライブ当日になった。

控え室でスタンバイしている俺と佳奈。

緊張で手足が震える俺の手を握ってくれている佳奈。

そんな俺たちの控え室をノックする音がした。



「はいっ。どうぞ!」



裏返った俺の声と同時に扉が開く。



「ようっ、藤崎! 元気にしているみたいじゃねぇか! ……声、裏返ってたけどな!」

「佳奈。元気そうで安心したよ」



そこにいたのは、居酒屋バイトしていたときによく俺に絡んできた先輩と、佳奈の友達の瑠奈ちゃんだった。



「先輩、余計なお世話です……」

「そんなこと言って、藤崎がライブのチケットをくれたんじゃねぇかっ!」



そう言われては、何も言えなくなる。

坂本さんに、俺たちは一枚ずつライブのチケットを渡されていた。

『見に来て欲しい人に渡しなさい』と言われたチケット。

俺は、この歌手人生を送るヒントをくれた先輩に渡したのだ。

佳奈はやっぱり瑠奈ちゃんに渡したんだな……。