坂本さんの問いに俺はもう一度、佳奈の言葉を思い返す。

全国各地のライブツアー。

ライブハウスでその地域の人々に歌を届ける。

それはやりたい。

たくさんの人が俺の歌を聴いて、その場で反応をもらえるなら頑張ってみたい。

だけど。



「こちらからも一つ提案をいいですか?」

「なんだい?」

「俺の専属マネージャーとして、深山 佳奈をお願いしたいです」

「えっ⁉」



俺の言葉に大きな声を出したのは佳奈だった。

無茶苦茶なことを言っていると自分でもわかっている。

でも、全国ツアーとなれば、佳奈と一緒にいる時間が無くなってしまう。

……佳奈がこの本社にずっといるのであれば。


それに、俺が自分の歌を本当に届けたいのは、佳奈ひとりだけだ。

俺の行く先に佳奈がいなければ、なにを想って歌えばいいのか分からない。

それはプロ失格だとは思うけど……。

それでも俺は、俺の意思を曲げたくない。