「前にも話したことあると思うけどさ、佳奈へ送る歌をうたい続けたいんだ」



佳奈に届けられるような歌。

佳奈の心に響く歌。

佳奈の心をつかめる歌。

そんな歌をうたい続けられたらいいなって思う。



「だけど、それだと万人受けしないんじゃ……」



佳奈がぽつりと呟く。

確かに万人受けはしないだろうな。

歌手デビューができても、すぐに人から忘れられて、テレビとかから消えてしまう人となるだろう。

それでも。



「俺は自分がうたいたい歌をうたうよ」

「……」

「背伸びしたくないんだ。……それに、坂本さんからオーディションの時に言われた」

「なんて?」

「等身大、ありのままの俺を見ることができて嬉しいって」

「そ、っか、!」



すると、佳奈はリクルートカバンからノートとペンを取り出した。

ノートに何かを書き込んでいく。

書き込んでいる内容は分からない。

だけど、佳奈が生き生きとしている姿が俺の目に映った。