パタン、と閉まったドアの前で立ち尽くす俺。

靴箱の上に飾られている写真立てが目に入った。

佳奈と俺の笑顔が、俺の心を荒らしていく。

2人で選んだ写真立て自体を捨てれば少しはスッキリするかもしれないけれど、それは出来なかった。

捨てたら、それはそれで後悔すると思ったから……。


俺は写真立てを伏せた。

気持ちの整理がつくまで写真が見えないように、このまま放置しておけばいい……。

俺は感情のままに、髪の毛をかき乱しながら部屋に戻っていった。


ああ。

怒りと悲しみで、俺の心がどうにかなってしまいそうだ。

腹の底から、ドス黒い感情があふれ出て止まらない。


佳奈にとって俺と過ごした時間はなんだったんだよ。

俺にとってはかけがえのない大切な時間だったのに、佳奈にとってはそうでもなかったってことかよ。

俺を簡単に裏切ることができる、そんな関係だと思っていたのかよ……。


悔しくて、悔しくて。

それでいて、自分が情けなかった。

佳奈の気持ちになにも気づけなかった。