「悠のことが大好きだからに決まってるじゃない! この、バカ野郎!」

「え……」



佳奈が大きな声を出す。

今までこんなに大きな佳奈の声を聞いたことがない。

それに今、『大好き』って言った……、よな?

驚く俺に、佳奈は言葉を続ける。



「大好きな悠に夢を叶えて欲しかったから! そのためには、寂しがり屋で仕事もしていない私が隣にいたらダメだと思ったの!」

「っ、」

「私がいたら邪魔だからっ、彼氏がいるなんて嘘ついたの! 悠に夢を叶えて欲しかったの!」



言い切った佳奈は、ぜぇぜぇと、肩で息をしている。

俺はそんな佳奈の言葉に動揺を隠せない。

全ては俺のためだったってこと……?

そんなことを佳奈は考えていたのか?


いや。

俺は、佳奈にそんなことを考えさせてしまっていたのか……?

自分への腹立たしさと同時に後悔が生まれる。


俺は、もう一度佳奈に歩み寄る。

涙を手の甲で必死に拭う佳奈を、今度は優しく抱きしめた。