佳奈の背中を見つめる。

俺のもとから去ろうとする佳奈。

そんな佳奈の背中は、もう二度と見たくない。

俺はベンチから立ち上がり、思わず走っていた。



「佳奈っ」



俺は佳奈の右腕をぎゅっと掴む。

立ち止まって振り返る佳奈の頬は、涙に濡れていた。

佳奈を抱きしめたい。

そんな衝動にかられた俺だけど、今は必死に自分を抑える。



「なんで、彼氏ができた、なんて嘘ついたんだよ」

「……」

「怒らないから。頼むから、俺から離れていった本当の理由を教えてくれ……」



佳奈はぎゅっと口を結んだ。

頑なに口を開こうとしない佳奈。

俺の何がダメだったんだ?

今も、佳奈にそんな悲しい顔をさせている理由はなんだ?


佳奈の腕を掴む手に自然と力が入る。

佳奈は俺から顔をそらし、一言も話さない。

だけど、ただただ涙をこぼす佳奈を見ていることが出来なくて。

俺は佳奈を思いきり引き寄せた。

バランスを崩した佳奈を力一杯抱きしめる。