そうだ。

私は、『新しい彼氏ができた』と噓をついて悠と別れたんだ。

今更、『あれは嘘でした』なんて、調子の良いこと言えない。


言えない……。

今までの私だったら。

でも、今の私は……。



「彼氏なんていないよ。彼氏ができたなんて嘘」

「え……」



私はベンチを立ちあがり、悠と向き合う。

震える手を背中の後ろで隠す。

そして精一杯の笑顔を作る。



「嘘ついて、ごめんね」

「……」

「それじゃあ、私は行くね」



私は向きを変え、歩き出す。

これで、これでよかったんだ。

悠に『おめでとう』って言えた。

悠に『ごめんね』って言えた。

そのふたつを伝えられれば、十分だよね……。
だけど、心が虚しくなるのはなぜ……?