『共感できる歌詞だよね』とか。

『世界観にも引き込まれるよねー……』とか。

『切ない曲なのに勇気もらえるよね』とか。


そんなに絶賛するものだから、私も興味が湧く。

誰がそんなに、素敵な歌をうたったんだろう。



「あの、私も聴いてみてもいいですか?」



坂本さんに尋ねると、彼女は頷いてパソコンにセットされているDVDを再生した。

今まで暗くなっていた画面が明るく表示される。


……これ、昨日行われたオーディションの様子?

私は思わず見入ってしまった。

だって、ステージの上に立っていたのは、悠だったから……。



『藤崎 悠です。忘れることができない彼女に届ける歌をうたいます』



悠の声が、オフィス内に響く。

私は思わず手で口を覆った。


悠だ。

悠がステージに立っている。

それに、“忘れることができない彼女”って、私のこと……?

私は曲を聴く前に涙がこみあげてきた。