先輩まで言うとは思わなかった。


中途半端。

俺は意味が分からなかった。


確かに先輩に“不合格”と話したのは俺だ。

だけど、先輩はオーディションの時の俺を見ていない。

それなのに勝手に“中途半端”なんて言われてムカつかないわけがない。


俺の悔しさは膨れ上がって、黙り込んでしまう。

そんな俺に気づかないのか、先輩は話を進める。



「藤崎は、想いを“届けたつもり”なんだろ?」

「……」

「誰かに“○○のつもり”って言っても通じねぇんだよ」



……確かにそうかもしれない。


俺は。

俺はどこか不安がっていたのかもしれない。


オーディションに落ちたらどうしよう。

この歌で大丈夫なのかって。

一生懸命歌って、“届けたつもり”になっていたんだ。


……そりゃ、落ちるよな。


俺はどうしようもない感情に陥った。

自分が情けない。

自分だけやり切ったと勘違いしていた。

審査員の坂本さんや先輩に対して、怒りの感情さえ湧きかけていたのを申し訳なく思う。

落ち込む俺は溜まっている皿を無言で片づける。


そんな俺の背中を思いきり叩いたのは先輩だった。