そう思って隣でシンクに寄りかかっている先輩をちらりと見ると、目を見開いていた。



「お前、オーディション受けていたのか?」

「え。そこからですかっ⁉」

「俺、オーディションに応募していたなんて、初耳だぞ⁉」



……確かに。

先輩に応募する、なんて言っていなかった気がする。

それは先輩が驚いた表情して当たり前だよな。



「で? 不合格だった理由はなんだったんだよ?」

「……中途半端、だったみたいです」

「はあ?」



俺はオーディションのときに言われた言葉を思い出す。


坂本、という名前の審査員の言葉。

いつ思い出しても悔しくてたまらない。



「佳奈に想いを届けたくて歌ったんですけど、本当に想いを向けていたのか、って言われて……」

「ほう」

「俺は届けたつもりだったんですけど……」



先輩は少し考えた様子を見せてから、俺に言った。



「そりゃ中途半端だな」

「え?」