「はあ……」



居酒屋の洗い場。

俺は皿洗いをしながらため息をつく。

何度もこぼれおちるため息。


原因は、オーディション不合格だったから。

そんな俺のため息を聞きつけてなのか、先輩がやってきた。



「藤崎ー。ため息ついてどうしたんだ」

「先輩……」



この先輩にはバカにされそうだから話したくないけど、でも、誰かに聞いてほしかった。

俺は皿洗いの手を止めることもないまま、呟くように話した。



「……オーディション、不合格でした」



先輩がごくりと息をのむ。

一瞬沈黙が流れた。

まあ、“不合格”なんて聞いてなんて言葉をかけていいのか分からないんだろう。

そりゃそうだよな。