騒がしいと思ったら、出入口の扉の前で女子たちが群がっている。人混みの間から中を確認すると、男子がバスケをして遊んでいた。

「きゃ~♡ カッコいいっ!」

男子の中で一際目立っていたのは、安村先輩だった。
Tシャツの胸元で汗を拭き、そのたびに鍛えられた腹筋がチラチラと見えている。

女子たちは安村先輩の一挙一動にきゃーきゃーしていて、私から見ればまるで動物園にいる猿みたいだった。

「もしかして、真紀も安村先輩のことを見にきたの?」

「え、違うよ。私は実和子と遊ぼうと思っただけで、その……」

これはウソですと言ってるみたいに、真紀の眼球がわかりやすく動いていた。

「真紀は……安村先輩のことをどう思ってる?」

「ど、どうも思ってないよ!」

「でも前にカッコいいって言ってたよね?」

「顔はイケメンだと思うよ。でも私がチャラい人は無理だってことを実和子が一番よく知ってるでしょ?」

「うん」

これは、きっとウソではない。だから絶対に真紀が浮気なんてありえないって思ってたのに、斉藤くんの反応は違った。