「菅谷って真紀と仲いいだろ。安村先輩のこととか聞いてない?」
「き、聞いてないよ。それに真紀はチャラい人は無理って言ってたし、安村先輩との浮気はさすがにないんじゃないかな」
「でもラインのやり取りの相手の名前が【ヤス】だったんだよ。身近でヤスがつく男なんて、安村先輩くらいしかいねーだろ」
たしかにうちの学校でヤスといえば、誰でも安村先輩を思い浮かべてしまう。
もしかして斉藤くん、ずっと思い悩んでいたのかな。
目の下にもクマができてるし、ひょっとして不安で眠れてないとか?
「なあ、菅谷。俺に協力してくれない?」
「きょ、協力……?」
「真紀が本当に浮気してるかどうか確かめたいんだよ」
「そんなこと言われても困るよ……」
「頼む! こんなこと菅谷にしか頼めないんだよ」
斉藤くんから手を握られた。
私は真紀のことが大切だ。でも斉藤くんが困ってることも放っておけない。返事の代わりに首を縦に振ると、「ありがとう!」と斉藤くんからハグをされた。