「あ、そういえば、なんでバスケ部の休みの日にハートマークを付けてたの?」
「だって、実和子と体育館でもイチャイチャしたいからさ。なのにバスケ部がいつも我が物顔で使ってるから、休みの日を把握したかったの」
「なるほどね。っていうか、ふたりきりの時には実和子って呼ばないでって言ってるでしょ?」
「ふふ、ヤス♡」
〝すがや〟だからヤス。それは私たちだけの秘密のあだ名。
私はずっと、斉藤くんが目障りだった。
一秒でも早く、真紀から引き離したかった。
だから勝手に勘違いをして、妄想をこじらせて、真紀と別れると言ってくれた時には心底ホッとしたし、真紀も電話で『やっと別れられた』って、嬉し泣きをしていた。
それなのに、斉藤くんは真紀への気持ちを断ちきらないどころか、絶対に諦めないなんて言い出した。
そんなの、愛じゃない。
ただの押し付けがましい執着だ。
「ところで、斉藤くんはどこに行っちゃったんだろう? いなくなってくれて、私はよかったけど」
真紀は知らない。知らなくていい。
「そんなのどうでもいいじゃん。これで邪魔者はいなくなったことだし、ずっと一緒にいられるよ」
「うん!」
抱きついてきた真紀を、私も抱きしめ返した。