「つまり真紀と別れたことを後悔してるってこと?」

「うん。やっぱり俺は真紀がいい。真紀じゃなきゃダメなんだ」

ドクンッと、心臓が跳ねた。

なんで、そうなるの?

真紀と別れるって、自分で決めたくせに。

ちゃんとケジメをつけるって、約束したくせに。

「でもそれって身勝手すぎない? 真紀だって振り回されて可哀想だよ」  

「だけど俺は真紀のことを手離したくないし、他の人に取られるのも無理だ」

「…………」

「真紀の気持ちが変わってたとしても、俺はまた振り向かせたい。押しまくって付き合ったあの時みたいに、俺は絶対に真紀のことを諦めたくない。真紀のことが好きなんじゃなくて、俺は本気で愛してるから!」

ブーブーブー。

ポケットの中で、スマホが鳴っている。

おそらく、着信は真紀からだ。私がなかなかトイレから戻ってこないから、心配してくれてるんだろう。


あー、鬱陶しい。

あー、うざい。

こいつ、邪魔すぎる。


私の中にある黒い感情は、もう抑えきれないほどに膨れ上がっていた。