「いや、菅谷はなにもしてない。これは俺の気持ちの問題っていうか……」
「どういうこと?」
「真紀、安村先輩と浮気なんてしてなかったんだ」
「え?」
詳しく話を聞くと、真紀のことを呼び出して、別れを告げた夜。その帰り道に斉藤くんは偶然、安村先輩と会ったらしい。
それで思わず『俺たちがこうなったのは、お前のせいだ!』と文句を言ったところ、安村先輩は覚えがないどころか、真紀のこともよく知らなかったそうだ。
「俺も最初ははぐらかしてるだけだと思った。でも先輩のスマホを確認させてもらったら、真紀とのラインのやり取りがなかったんだ」
「でも真紀のスマホには、浮気相手とのやり取りがあったんだよね?」
「ああ。だから安村先輩とは別の人ってことになる」
「だったら、どのみち結論は同じなんじゃないの?」
「でも、俺はてっきり相手が安村先輩だと思い込んでたから違うとわかって拍子抜けしたっていうか。逆に疑いまくって悪かったなって今は思ったりもしてて……」
斉藤くんが煮え切らない態度で、モゴモゴと口を動かしている。
せっかくいい気分がしてたのに、だんだんと腹が立ってきた。