「あ、今日の放課後、遊ぼうよ。私、実和子んち行きたいな~」
「ごめん。今日、委員会なんだよ」
「あー月曜だからそうだよね。じゃあ、私、終わるまで待ってようか?」
「ううん。遅くなるかもしれないからいいよ。今日の埋め合わせはあとでちゃんとするから」
「うん。わかった!」
迎えた放課後。私は図書室で斉藤くんと仕事をしていた。
カウンターの中で並んで座って、生徒たちが持ってくる本の貸出と返却の受け付け業務に追われていた。
「なあ、菅谷。また家に遊びに行ってもいい?」
斉藤くんからそう言われたのは、人の出入りが落ち着いて一息ついてる時だった。
いいよ、と言いかけた唇が止まる。真紀の誘いを断った手前、ここで二つ返事をするのはさすがに違うと思った。
「……私と遊びたいなら、ちゃんとケジメをつけてよ」
私は斉藤くんの浮気相手になる気はない。
ケジメという単語がなにを意味するのか悟ったように、斉藤くんは強い目をして私のことを見た。
「俺、真紀と別れるよ。今日の夜に呼び出して、直接言う」
その言葉に、じわじわと嬉しさが込み上げてきた。
どうしよう。顔がニヤけてしまう。
「真紀と別れたら、連絡するから」
「うん、うん……!」
その日の夜。私に電話をかけてきたのは、斉藤くんじゃなくて真紀だった。
電話越しの真紀は泣いていた。
ヒクヒクと声をしゃくり上げるくらいに。
ああ、この瞬間をどれだけ待ち望んだことだろう。
今日は忘れられない最高の日だ!