斗悟さんは真面目な目つきで、ワンピースをチェックしている。少し日に焼けた、精悍な顔立ち。整った鼻筋は彫刻のようで、長いまつ毛に覆われた黒褐色の瞳はどこまでもクールだ。

いくつも店舗を手掛ける外食産業グループの社長が、十歳も下の親友の妹の洗濯事情を心配しているなんて誰も想像できないだろう。

「明日の朝メシは? 炊飯器セットしてるのか?……
してないよな、やっぱり」

そう言いながら彼は広いキッチンへと入っていく。ここは、彼の家だからだ。

私たち三人は家族のように仲が良かった。兄は、幼稚園の頃から妹の面倒を見るのが義務だと思っていたけれど、なぜか幼い斗悟さんもそう思っていて、それが今まで続いている。それは、高校、大学、就職して彼が自分で起業し大成功した今でも変わらなかった。

だから、兄の「頼む。少しでいいから、楓の様子をたまに見てやってくれないか」という願いにあっさり、
「心配だから俺の家に住まわせる。一人暮らしなんて問題外だ」と答えたのだ。もう一人の兄として。それが斗悟さんの考えであり、覚悟だった。

だからどんなに、あの馬鹿兄貴はお前みたいな子供を置いて夢を追いかけた、と悪態をついても、彼がわたしの兄と、わたしをほんとうに大切に思っていてくれているのは明白で、とてもとてもありがたくて、そして。

少し切ない。