今度こそ朝日のせいではなく、キトエの頬に薄く色がかぶさって、笑ってしまった。

「リコ。カードで勝ったときのお願い、今使ってもいいか?」

「お願い? ああ」

 何のことかと思ったら、城でカードをしたとき、『勝ったほうが負けたほうに何でもひとつお願いできる』というルールで、キトエは何もお願いしなかったのだった。

「いいよ。なあに?」

「キスしたい」

 見つめられて、リコは思考が止まる。理解して、首筋が熱くなった。

「お城では断固拒否してたくせに!」

「あれはリコを汚すわけにはいかなかったからだ! 今は俺はリコのものだし、リコは、俺の」

 それ以上は声が小さくなっていって聞こえなかった。リコは不満で頬を膨らませてキトエをじっとりと仰いでいたが、仕方がないので目をつぶった。

 風が頬に触れて、唇が触れ合う。革と、みつろうのほのかに甘い香りと、キトエの香りがした。

 唇が離れて、照れ隠しに不満を口にしようとしたら、もう一度強く唇を触れ合わされて、体が固まる。固まった体をきつく抱きしめられて、鼓動が強く跳ねた。頬が熱い。