「結界がうそならいいと思ってた。でもここに来たら本当に魔力が吸い取られて外に出られない。生贄になっても死ぬ。生贄じゃなくなっても死ぬ。生贄に選ばれた時点で、どうやっても、死ぬ」

 ひざを折って、座った。

 今から言うことは、懺悔だ。少しでも報いを受けたいだけだ。そらしたくなるのをこらえて、キトエを正面から見る。

「だから、最後にキトエと恋人みたいにすごしたかったの。うそでも冗談でもない、キトエが好きなの。人間として、男の人として、ずっと一緒にいてくれて、大切で、本当に、本当に好きなの。ここに来るまでは、どうせわたしは誰かと結婚させられるから、意味がないって逃げてた。ここに来てからも、恋人になってって言ったら、もしかしたらキトエもわたしのことが好きだったって言ってくれるんじゃないかと思って……でもそんなのわたしのうぬぼれで、それ以上拒絶されるのが怖くて、冗談みたいにしか言えなかった。けど、もっと早く、ちゃんと好きって、ずっと前から好きって、勇気を出して言えばよかった」

 本当は言わずに終えるつもりだった。本当の気持ちを伝えて、拒絶されるのが何より怖かった。