キトエはにわかに複雑な表情になった。ここに来てから理不尽なお願いばかりされているからだろう。けれどリコも冗談ではなく本気で頼んでいるのだ。うぬぼれはあるが、そのお願いも男性なら嫌な気はしないと思うのだが、キトエはリコを女性として見ていないのだろう。そう考えるととても苦しい。

 リコが円卓につくと、キトエも向かいに座った。カードを切って中央に裏返しに置く。一枚ずつ引いて、額にあてる。

 キトエのカードはハートの七。初手からとても難しい。確率的にはリコが大きい数字を引いている可能性のほうが高いのだろうか。

「変えたほうがいいと思う?」

 キトエをうかがうと、小さくうなって目をそらした。キトエは素直だからすぐ顔に出てしまってこういうゲームは向いていないけれど、今のはどちらだろう。これ以上お願いされないために勝ちたいはずだが。

「キトエは変えないの?」