朝起きて、日記帳に目を通して自分の症状などを把握したらドアに貼られた紙で妹の存在と名前を確認する。

そこに今日からスマートフォンの写真フォルダを見るという行為が追加された。


「⋯⋯楽しそう」

日記帳に書かれていた通りフォルダに目を通してみれば、そこには私と男の子が映っていて、二人ともとても楽しそうな笑顔をしている。

記憶にはないから懐かしいという感覚はないけれど、何故かその写真を見ると心が落ち着いた。

昔書いた日記の中に友達は作りたくないといった様な一文があって、今日の私も自分の症状を考えれば友達という存在は作るべきではないし作れないと思う。だけどどうやら私には一人だけ友達がいるらしく、きっと⋯、いや99.9%写真に映る彼こそがそうなのだろう。


部屋を出てリビングへと行くとお母さんが「随分早起きね」と朝食を作りながら言うからいつも通りのアラーム設定なんだけどなと不思議に思っていると「もう夏休みでしょ?」と言われてそういえば⋯とカレンダーをみれば先週の金曜日が終業式だった。


「アラーム設定変えるの忘れてた」

「休みの日は佳乃いっぱい寝るから朝ごはんまだ作ってないよ?」

「大丈夫、自分でトースト焼く」


そう言ってトースターに食パンをセットしながら、新聞を読んでるお父さんに「おはよう」と言って朝のニュース番組をつまらなそうな顔で見ている彩乃にも「おはよう」と言う。


「⋯⋯おはよ」


彩乃は私をうんざりした顔で一瞥しながらもちゃんと挨拶を返してくれて、その態度で自分と妹の関係は良くないのだと察する。

でもそれと同時に挨拶はしてくれるのだと安心もした。


「彩乃はまだ夏休みじゃないの?」

「夏休みだけど」

「でも、体操服着てる」

「部活あるから」

「部活、かあ⋯」


素っ気ないながらも会話をしてくれ彩乃に嬉しくなってつい、口角が上がる。


「コンクールも近いもんな」

「コンクール⋯」

「彩乃はソロパートもあって凄いんだぞ。佳乃も一緒に応援行こうな」


私と同じく嬉しそうに会話に混ざるお父さんに「行ってもいいの?」と聞けば「もちろん」と返ってくる。