泡沫の夢の中で、一寸先の幸せを。【完】


バスを降りて電車に乗り換え、数分。


「わあっ、すごい!」


目的のヒマワリ畑へとやって来た私たち。

目の前に広がるのは、一面のヒマワリだ。


「すごいすごいっ!綺麗だし可愛い~!」

「ヒマワリに可愛いとこあるの?」

「あるよ!可愛いじゃん」


どこを見渡してもヒマワリ一色の世界ではしゃぐ私。大きく育ち、太陽の方へと真っ直ぐ咲いているヒマワリは綺麗で可愛い。

色合いも圧倒的な陽の雰囲気も、何もかもがテンションを上げてくれる。


「佳乃より全然背高いね」

「あは、確かに。⋯すごいなぁ」


さすがに背の高い拓海よりはまだヒマワリは小さかったけれど私の背丈なんてゆうに越えているヒマワリはまだまだこれから大きくなるらしい。今は7月中旬だけどここのヒマワリの一番の見頃は下旬から8月上旬だとか。

花開いたヒマワリを見上げながら、関心すらしてしまう。

こんなに大きく育って、こんなにも綺麗で。

純粋に凄いなって思う。


「写真撮ってあげよっか」

「⋯⋯うん、撮って欲しい」


思い出を残す事が怖かったから写真を撮られる事はあまり好きじゃなかった。

だけど今日を思い出に残したい。形に残しておきたいと思ったんだ。

それがどうしてなのかは分からないけど、拓海と過ごす時間は永遠に無かったことにはしたくない。ちゃんと現実にあった事なんだって証が欲しかった。


「そんじゃ撮るぞー」


スマートフォンを構えた拓海がパシャリと私の写真を撮る。一枚ではなくて何枚も何枚も。ヒマワリ畑の中を進む度に、拓海は私の写真を撮っていた。

だから私も拓海の写真を撮って、二人でも一緒に映って、内カメに慣れない同士だったからどっちかが半分しか映っていなかったりブレていたりして笑い合って。
やっと上手に撮れたねって言い合って。

たまに気付かないうちに不意打ちで写真を撮られてたから私も内緒で拓海の横顔だったり後ろ姿を写真に収めたりして。

花の笑顔の様なヒマワリに囲まれて拓海とわちゃわちゃと過ごす時間はあっという間で本当に楽しかった。