泡沫の夢の中で、一寸先の幸せを。【完】


その後更衣室で体操着に着替えて、マラソンに励む。

さっきの子の言う通りマラソンなんてさせるなら自習でもいいのにと思いながら同じ景色のグラウンドをゆったりと走る。

偏差値が全てではないけれど、この学校にはマラソンを本気で走る生徒なんていない。
皆、塊を作って談笑をしながら走っている。

それを体育教師はたまに注意するものの、あまり効果はなく、賑やかなマラソンは続いた。


友達と呼べる存在がいない私は一人走る。

ふと上を見上げればキラキラ輝く太陽が眩しくて目を細めた。

もうすぐ夏がやってくる。

18歳の夏、私は運命の出逢いをすることになるなんてこの時はまだ知らなかった。