泡沫の夢の中で、一寸先の幸せを。【完】


私たちが向かうのは国営の大きな公園にあるひまわり畑。そこは花の名所として有名で春にはチューリップ、秋にはコスモスなど季節によって色んな花が咲いているらしい。

丁度隣町にあるのでバスに乗ってターミナル駅まで行き、そこから一駅で着く事が出来る。

防波堤から10分程歩いた所にあるバス停に向い、目的のバスがやって来るのを待つ。


「俺いつもこのバス停から登下校してるんだよ」

「そうなの?」

「うん。あ、ここ一応屋根はあるけどこれ小さな穴がいっぱい空いてるから雨の日に油断してたら普通に濡れるの知ってた?」

「え、嘘っ?」

「前一回それで濡れたことある」

「最悪なトラップだね」


そう言いながら上を見てみれば確かに、分かりづらいけれど無数の穴が屋根に空いていた。
小さなトタン屋根の下で古びたベンチに座りながらバスを待っている間も会話は絶える事がなく、程なくしてバスが止まった。


乗客はほとんど居なくてほぼ貸切状態のバスの中、私たちは後ろの方の席に並んで座る。

とてもゆったりとしているとは言えない座席は、気を抜けば肩が拓海と触れ合ってしまいそうで、私は必死に姿勢を正して縮こまりながらバスに揺られていた。