くるぶし丈のワンピースを揺らしながら海沿いの道路をなるべく緑陰の中を探して歩く。
今日も日差しは強いから麦わら帽子を被って正解だ。
堤防の向こうには青々とした海が広がっていて、白い波は寄せては返しを繰り返している。
どこからか蝉の鳴き声もしていてまさに夏本番。夏真っ盛りの今日この頃。
いつもの防波堤が見えてくると、そこには一つの人影があり。遠くからでもそれが拓海だと分かるのは待ち合わせているからで。
ふと、いつもと立場が逆だと思った。
いつもは私が先に防波堤に座っていて拓海が後からやって来る。
それは学校の終わる時間や学校までの距離のせいだと思うけど、こんな風に一人防波堤に立つ彼を見れたのがラッキーだと思った。
海に沿って緩いカーブのこの道は遠くからでも防波堤を視界に捉える事が出来るから、いつも気付かぬうちにこんな風に拓海に私の姿を見られていたのだと思うと恥ずかしくて悔しい。だから今日は私がその姿を見られて嬉しかった。
「拓海」
防波堤まで着き声を掛ければ海を眺めていた彼が振り返る。
白いシャツと黒いチノパンという格好の拓海はスタイルの良さと整った顔立ちのおかげでラフな服装なのに何故か決まっていた。
むしろ素材が良いからラフな方が似合うとすら思った。
「何、どうした?」
拓海のことを上から下まで視線を辿らせて見ていれば、可笑しそうに笑う声が聞こえる。
制服姿ではない拓海は新鮮というか初めてで、普段よりも大人っぽい雰囲気にドキッとしたけれどそれを素直に口にするのは躊躇われる。だって、恥ずかしいから。
だから私は「今日も暑いね」なんてありきたりな言葉を発して、拓海から目を逸らした。



