泡沫の夢の中で、一寸先の幸せを。【完】


その後は大きく息を吸って吐いて、気持ちを切り替えたお母さんが「さっ、続きしましょう」と明るい声を出しながら火を付け直す。

その少し赤くなり潤んだ瞳に私は「うん!」と返事をして一緒に夕飯作りを再開した。


その夜、お母さんはたくさんの唐揚げを作ってくれて、彩乃はげんなりしていたけれど私は嬉しくてお腹が出てしまう程たくさん食べた。
大量の唐揚げにお父さんは胃もたれがナンタラと言いながらもしっかり食べていて、結局この夜唐揚げが残る事はなかった。


寝る支度を整えた後、お母さん達に「おやすみなさい」と告げて部屋へと向かう。

明日は約束の土曜日で、スマートフォンに届いていた<明日楽しみにしてる>というメッセージを見て無意識のうちにベッドの上に寝っ転がりながら足をバタつかせていた。


「明日、かあ⋯」


こんな風に家族以外の誰かと出掛けるのは本当に久しぶりでわくわくする。

⋯そういえば、着ていく服はどうしよう?

出掛ける事自体少ないから、洋服もそんなに持っているわけじゃない。

ヒマワリを見に行くわけだし、ワンピースなんてどうだろう?そう思いクローゼットを開ければ、ハンガーに掛かったワンピースが3着あって、その中の白いものを手に取る。

なんか、前の晩から服装を選ぶなんてちょっと浮かれすぎかも⋯。と思いながらもどうせならお洒落して行きたいし⋯と大きめの麦わら帽子も手にして明日はザ・夏の少女をコンセプトにしよう!と開き直って浮かれまくった。

ドキドキとわくわくはベッドに入って目を閉じても続き、なかなか眠りにつけなかった私はこのままでは明日クマが酷い事になってしまうという危機感に無理やり眠りについた。