泡沫の夢の中で、一寸先の幸せを。【完】


まるで私の周りだけに薄い膜が張られている様な学校生活は楽しくもつまらなくもない。

これがもう長いこと私の当たり前で。だからつまらなくはないけれど寂しくはある。

私だって友達が欲しいし、色々な話をしたい。思い出話をして、先の約束をしたい。
恋だって、憧れている事のひとつだ。

誰かと想い合えるって素敵だと心の底から思う。

だけどきっと、絶対に、私を好きになってくれる人は現れないんだろうな。

自分のことを七日で忘れてしまう彼女なんて誰も求めない。だから誰かと恋をする事は夢のひとつである。きっと、叶う事のない私の夢。

そんな事を考えながらボーッとしてると、段々と教室から人が減っている事に気付く。


「ねえ、」

「ん!?あ⋯、どうしたの?岩崎さん」

不思議に思い近くにいる子に声を掛ければ、分かりやすく困惑した表情を作ったクラスメイトが首を傾げた。

誰とも深く繋がれない私に対する態度は皆似たようなもので、やっぱりどう接すればいいのか分からないといったものだった。

「⋯皆どこかへ行くの?」

「え?」

「今日の一限って現国じゃなかったっけ?」

そう言って教室に張られている時間割表に視線を向ければ、間違いなく今日の一限のコマには現国の文字がある。
だから移動教室ではないはずなのだけど⋯と考えたところで目の前のクラスメイトは「ああ!」と納得した様に大きく頷いた。

「今日の一限は体育に変わったんだよ」

「⋯体育に?」

「現国の先生が今日は出張だからって。先週一応知らせがあったんだけど⋯」

「⋯先週、」

「朝から体育なんて最悪だよねっ、自習でいいじゃんって感じ⋯。あ、じゃあ、私も更衣室に行くから⋯」

「っ教えてくれてありがとう!」

先週の事は私には分からない。

気を使わせてしまったのは申し訳ないけれど、これまた分かりやすく気まずそうに足早に私の前から去っていくクラスメイトにギュッと心が痛んだ。