泡沫の夢の中で、一寸先の幸せを。【完】



クーラー設備の整った教室での授業は快適だ。だけど設備の整っていない体育館での授業は、拷問かってくらいにうんざりする。

暑い、暑い、暑いしか出てこない。

語彙力皆無、頭を占めるのは暑い!の一単語のみだ。


「夏は体育の授業中止にするべきじゃない?」

「それな。水泳の授業ならともかくこの灼熱の体育館でバレーボールをする意味が分かんない」

「先生も汗びっしょりじゃん」


バレーボールの試合中、自分たちのチームの出番ではなく試合を見学している子たちの会話が聞こえてきて、心の中で大いに賛同する。

三年生になると水泳の授業はなくなるらしく、私たちは夏だというのに何故か体育館でバレーボールをしている。

果たして蒸し蒸しした体育館でバレーボールをする意味があるのか。その意味を見い出せずにいるけれど、だからといってサボる訳にもいかず、やる気のないバレーボールの試合をただ見つめた。


行ったり来たりするボール。

たまに床に落ちて、「いぇーい」という間延びした声と「あー⋯」という大して残念そうでもない声が体育館に小さく響く。

この暑さでは誰もやる気なんて出るはずもなく、体育教師までも「暑っついなあ⋯」とタオルで汗を拭っている。


「暑いね、岩崎さん」


そんな事を考えながらボーッと試合の行方を見守っていれば、隣から声を掛けられる。


「⋯私?」

「うん。暑くない?今日」


声がした方を振り向けば、髪の毛をポニーテールに結んだ小柄な女の子が立っていて、考えなくてもクラスメイトだという事は分かるけれど、彼女の名前までは分からない。

「うん。暑いね」

だからそれをなるべく悟られないように頷いた。


「なんでこんな暑い日にって感じだよね。普通に教室で勉強してた方がマシ」

「あはは、確かに」

「だよねぇ」


彼女は可愛らしい笑顔を向けた後「あ、次私たちの試合だよ」と教えてくれて。


「私、こんなちっちゃい背だけど一応バレー部なの。ま、万年補欠だけど」

「そうなの?」

「うん。でも多分、今日のチームの中では私が一番上手いと思うから任せて」

「うん。任せる!」


なんだか彼女は話しやすくて自然と笑顔になる。大きく頷いた私を彼女は笑って「任せて!」ともう一度言ってくれた。