だから代わりに「大丈夫」と微笑む事が精一杯だった。
「私、拓海のこと結構好きなんだ」
「⋯うん」
「だから、きっと大丈夫」
「⋯うん」
「大丈夫、だから⋯」
何が、なんて答えはなかった。
ただ理由もなく「大丈夫」と言うしか出来なかった。
「またアイス食べよう」
「⋯拓海」
「そんでもしアタリが出たら、嬉しいね」
「⋯ふ、そうだな」
私の言葉に一瞬目を開いた後面白そうに笑う拓海を不思議に思いながらも、やっと拓海が笑ってくれた事に安心する。
「じゃあ、また来週ね」
「うん」
「またね。拓海」
ゆっくりと離れる手。
重なった影がだんだんと離れていく。
この時彼は一体どんな想いで見えなくなっていく私の背中を見つめていたのだろう。
今週、この防波堤で交わした会話を、過ごした時間をこの先覚えているのは拓海しかいない。
ずっと、ずっと、彼だけの思い出になる。
それがどんなに苦しいものなのか、忘れてしまう側には到底理解出来ないものなのかもしれない。
それでも私は、彼に惹かれていく心を止める事なんて出来なかった。



