泡沫の夢の中で、一寸先の幸せを。【完】


「なっ、ななな、何っ!?」

「んー⋯?」

「可愛いとか、いきなり!」

「思った事は口に出さないと」

「意味わかんないっ⋯!」


恥ずかしいやら驚きやらでパニック状態の私に拓海は冷静に笑みを深くするから、私がおかしいの?って一瞬思ったり。

だけど普通は、可愛いとか言わないと思う。私たちは友達なわけだし。
⋯⋯そうだよ、友達なのに可愛いなんて⋯。

友達、なのに⋯。


「私たち、友達、でしょ?」

「友達だったら言っちゃいけない?」

「いけないってわけじゃないけど、普通は言わない⋯んじゃないかな⋯?」

「でも俺は言いたい」

「言いたいって⋯、」

「俺が思ったこと全部、佳乃に伝えたい」


柔らか笑みのまま、真っ直ぐに私をその瞳に映す拓海に私も目を逸らせなくなる。


「だからさ、」

「っ」

「佳乃も全部俺に教えて」

「教える⋯?」

「佳乃が思ってること、俺にも分けて欲しい」


拓海の手が、ゆっくりと私の手へと伸びてくる。
だけどそれは私の手に触れるギリギリの所で動きを止めて、元の位置に戻ってしまった。


「佳乃」


何を言うでもなく、私の名前を呼ぶ拓海。

その表情はまるで私のことを大切に思っているって言っている様で、そんなはずないって分かっているのにそう思わずにはいられなかった。

もしも、瞬きをする度に目に映る景色を写真に残せたなら私は、今この瞬間にシャッターを切りたいと思った。