泡沫の夢の中で、一寸先の幸せを。【完】


翌日も変わり映えのない日常を過ごす。

放課後には防波堤に行ってアイスを食べながら海を眺める。

今日も当たり前に海は広く、青い。


「佳乃」

「拓海っ」

「今日は暑いな」


今日も来てくれた彼は私の隣に座りながらアイスを食べ始める。どうやら今日は自分の分しか買っていないらしい。


「私の分は?ないの?」

「さっき食べてたじゃん」

「⋯なんで知ってるの?」


冗談で手を出してアイスを催促してみれば、彼は少し笑いながら自分の分のアイスを齧る。


「そこのコンビニからここ見えるんだよ。ついでに言えば、バス停からここまで一本道じゃん。海に沿うように道も緩やかにカーブしてるし、バス停からもずっと佳乃見えてるよ?」

「⋯確かに」

「暑いからって一気に二本も食べたら腹壊すよ」

「私のお腹は丈夫だもん」


そう言ってぽん、と軽くお腹を叩いて見せる。
まあ、念の為アイスはもういいけど。


「ねえ、」

「うん?」

「このアイスアタリとハズレがあるの」

「うん」

「私今日ハズレでさ、拓海のも早く見せて」


少しだけ彼の方に身を傾けて、アイスを齧る顔を見上げる。

すると目線を下に下げた彼とバチりと目が合って、数秒時が止まった────感覚がした。


「⋯⋯佳乃ってさぁ、」


ハッとして目を逸らした私の頭上で拓海の声がする。

その声があまりにも近くで聞こえてきたから、私は顔を上げる事も出来ず、髪の毛にゴミとか付いてないかな?と的はずれな心配をした。

緊張、なのかなんなのか。

ドクドクと鳴る心音と、パチパチと繰り返す瞬き。

そんな私に気付いてか、ふっと笑った拓海の吐息が軽く前髪を揺らした。