泡沫の夢の中で、一寸先の幸せを。【完】



日の長くなった夏でも日が沈まない事なんてない。
叶うことならこのままずっと海を眺めていたいけれど⋯。


「じゃあ、私そろそろ帰るね」

「送ってく?」

「ううん。大丈夫。すぐそこだし」


半分姿をを水平線の向こう側に隠してしまったオレンジ色を見ながら立ち上がれば、彼も同じ様に立ち上がる。

私よりも20センチ以上大きいだろうその背丈。


「拓海は背が大きいんだね」

「そう?」

「うん。大きい」


背伸びをしても全然届きそうにない。「身長いくつなの?」と聞けば「178」と返ってくる。やっぱり私と20センチ以上差があった。

忘れたくないなぁ、と思う。

今日の事を忘れたくない。

身長何センチ?なんていう些細な会話も忘れたくない。


「じゃあ、またね」

「ああ。また」


小さく手を振って背を向ける。

なんだか少し、目頭が熱くなった。

こんな風に誰かと過ごしたのは久しぶりで、楽しかった反面凄く寂しさも感じた。

彼はまた明日も来てくれるだろうか。

明後日もその次も、来週も。

またここへ私に会いに来てくれるだろうか。