泡沫の夢の中で、一寸先の幸せを。【完】


その週末の夜は眠りたくなくてずっと窓から夜空を見上げていた。

キラキラ輝く星はいったいどれくらい離れているんだろう?とか、5日聴いていれば自然と口ずさめてしまう様になった朝のニュース番組のテーマソングを歌ってみたり、今日食べた唐揚げ美味しかったなとか色々しながら、眠りにつきたくなくでずっと思考を働かせていた。

彼が声を掛けてくれて、友達になった事とか。一緒に海を眺めた事とかその時の横顔とか。隣に座った時の温もりとか、声とか。
アイスを食べた事や約束をした事とか。

色々な事を思い出しては忘れたくないと思いながら段々と淀んでいく思考に抗えなくなっていく。


今週も忘れたくない事がたくさんあった。

彼との事だけじゃなくて、彩乃がソロパートわ貰えた話もお父さんがケーキを買ってきてくれた事もお母さんと話した事も全部全部忘れたくなんかない。

忘れたくないよ。

ギリギリまで目を開いて頑張ってみたけれど重たくなっていく瞼。

もしも私が睡眠を取らなくても大丈夫だったなら、記憶を失う事はないのかな?


⋯ああ、もう、限界だ。


完全に思考が止まって、夢の中へと落ちていく。
この瞬間が私は本当に、恐ろしかった。