泡沫の夢の中で、一寸先の幸せを。【完】


暫しの沈黙の後、お母さんはほんの少し眉を下げる。


「友達⋯?」

「うん。友達」

「学校の子?」

「ううん。防波堤で出会った男の子」

「⋯その子、信頼出来るの?」

「変な人じゃないよ。⋯変なところはあるけど」

「どういう事?」

「怪しい人ではない。普通の男の子。私のことを見て友達になりたいって思ったんだって。あ、青色のネクタイで、制服のズボンは無地の黒だったかな」

「⋯⋯ここら辺で青色のネクタイといえば青凛高校かしら」

「その子と友達になったの」


私の言葉にまたもや黙り込んだお母さんはどんな事を考えているのだろう。

私が友達を作るなんてやめた方がいいとと思っているのだろうか。


「その子は佳乃の⋯記憶について知ってるの?」

「うん。話した」

「⋯⋯」

「その上で私は彼と友達になったの」


話を聞いただけで、たった数時間共に過ごしただけで私のことを理解出来る訳がないし受け入れるなんて出来っこない。

だけど彼は一度無理だと去った後、もう一度私に会いに来てくれたと言っていた。

だから私も彼を信じてみたいと思った。

友達になれるかもしれないと、友達になって欲しいと思った。


「⋯⋯お母さんね、佳乃には毎日を楽しく過ごして欲しいと思ってるし、周りの子たちと同じ様に学生生活を送って欲しいと思ってるの」

「うん」

「全く同じとはいかなくても、楽しく過ごして欲しい。だけどそれと同じくらい傷付いて欲しくもないの。分かる?」

「⋯分かるよ」


幼い子どもに語り掛けるみいに言葉を紡いでいくお母さんの言いたい事は分かっているつもりだ。

昔、私がどんな風に友達を失っていったかは覚えていないしその時の気持ちだって分からない。だけど想像は出来る。

もう友達なんて作れない。作らない方がいいという考えに至った経緯を、気持ちを、想像する事は難しくない。

だからそれを近くで見てきたお母さんが心配するのも無理はないと思う。

だけど私は⋯⋯。