泡沫の夢の中で、一寸先の幸せを。【完】



夕食の後、お父さんが買ってきてくれたケーキを食べながら団欒の時間を過ごす。

きっと朝気まずい空気になってしまったからお父さんはケーキを買って帰ってきてくれたのだろうけど、彩乃は早々にケーキを食べ終えると自分の部屋に行ってしまった。

だけどそれはわざとそうしたのではなく、どうやら友達から電話が掛かってきたかららしく、私はさほど気にせずのんびりとケーキ食べていた。


「前に買ってきた時ここのショートケーキが美味しいって佳乃が言ってたから仕事の後に急いで買いに行ったんだぞ?」

「そうなの?ありがとう、お父さん」

「美味いか?」

「うん。凄く美味しいよ」


もちろん、前に食べた時の記憶はないけれど真っ白い生クリームに柔らかいスポンジ、上に乗った大きなイチゴ、見た目からして極上のショートケーキはとても美味しい。

もぐもぐと食べる私にお父さんは「それじゃあまた買って帰ってくるよ」と微笑んだ後、仕事があるからと書斎に向かう。

その背中にもう一度お礼を言って、リビングにお母さんと二人きりになったのを見計らってふう、と息を吐く。


「どうしたの?疲れちゃった?」


それを聞いたお母さんがコーヒーを飲みながら首を傾げ割るから私はゆっくりと首を振った。


「あのね、お母さん」

「どうしたの?」

「私、今日、友達が出来たの」


お母さんにはちゃんと言っておこうと思った。家族皆に隠し事したくないけど特にお母さんには何でも話さないとって思っている。

なんてのは建前で、いやもちろんそれも本音なんだけど一番の理由は誰かに肯定して欲しかったのかもしれない。

友達を作る事を諦めていた私に「良かったね」って言って欲しかったのかもしれない。

彼に手を伸ばした事を後悔してる訳ではないけど後悔していないとも言い切れない私に優しい言葉を掛けて欲しかった。