きっと、最初から諦められなかったのは私の方だ。 知らない人に記憶の事を話した時点で、彼にもう一度同じ場所に来て欲しいと賭けた時点で、私は彼を諦める事なんて出来なかったのだろう。 「私は、岩崎佳乃」 「佳乃?」 「うん」 「佳乃かぁ。いい名前だな」 彼に呼ばれる佳乃という名前は、なんだか特別な気がした。