泡沫の夢の中で、一寸先の幸せを。【完】



「君次第だってアンタが言ったんだよ」


ふっと短く息を吸った彼は、真っ直ぐに私を見つめた。


「俺次第なら、俺はやっぱりアンタの友達になりたい」

「⋯友達にって⋯」

「そんでやっぱ何度考えても好きだって思うから、隣にいたい」

「⋯っ」

「アンタの事をもっと知りたい」


真っ直ぐな言葉と瞳は頭上で輝く太陽よりも体温を上げたんじゃないかって思った。

何言ってるのこの人って混乱して、それなのにどういう理由かその言葉が嬉しいなんて思ったりもして⋯。


「い、意味分かんない⋯!」

「どこら辺が?」

「全部っ⋯、好きとかもだし」


混乱と照れくささでアタフタする私とは反対に余裕綽々で緩く笑う彼。


「一目惚れしたんだよ。だから好きだし出来ることなら付き合って欲しいと思ってる」

「っ」

「けどお互いまだ何も知らないからまずは友達からって事でどうですか?って言ってんの」

「友達からって⋯、」


あまりにも彼が普通に言うものだから、照れくささも段々と和らいでいき、今度はただただ疑問だけが湧き上がってくる。


「あなた、私の記憶の事ちゃんと理解してる?」

「一週間の出来事しか覚えていられないんでしょ?」

「その意味、ちゃんと分かってるの?」


被せ気味に発した私の言葉に彼は笑みを消して頷く。