ポタリ、アイスが溶けて手首を伝う。
そのひんやりとした感覚にハッとして、慌てて溶けたアイスを拭ってから残りを一気にかぶりついて食べる。

それを見て「涼しそうでいいねぇ」と呑気な声を発した彼は本当に、私の友達なのだろうか。

その可能性は限りなく低い気もするけれど、その言葉を信じてみたい気もする。


「私の友達ってどういう意味ですか?」


食べ終わってハズレと書かれた棒だけになったアイス、だったものを置いて問いかける。

きっと今の私は懐疑的な態度全開だろう。


「どういうってそのままの意味だよ」

「人違いでは⋯?」

「ううん、ない。絶対にアンタだよ」


益々意味が分からなくなって、思わず黙り込む。

私に友達という存在はいないはずだし、それは学校での生活の様子や今の自分を客観的に見れば例え今週までの記憶しかなくてもすぐに分かる事で。

⋯⋯もしかして、いつかの私は友達という存在を作ろうとしていたのかな。彼はその時の友達なんだろうか。
もしそうだとしたら、あまりにも短絡的で身勝手な自分の行動に反吐が出る。

彼を覚えてすらいない私が友達を作るなんて、自分勝手もいいところだ。

だけど次の彼の言葉で、どうやらそうでもない事が分かった。


「少し前に、俺と友達になって欲しいって言ったんだ。だけどアンタは“来週またここに来て”って。約束通りそこ⋯つまり、今いるこの場所なんだけど、ここに来たら自分は一週間で記憶を失ってしまうって」

「⋯記憶の事、知ってるの?」

「うん。だから友達にはなれないって言われた」


その流れにすぐに納得出来たのは、今同じ事が起きても私は全く同じ事を言うだろうと想像出来たから。

友達になりたいと言ってくれたのは凄く嬉しいけれど、私は友達を作るべきではない。だからきっと同じ事を言う。

───────だけどどうしてだろう。

彼は記憶の事も知っているし、私は断ったはず。それなのにどうして彼は今、また私の前に現れたのだろう。

どうして友達だと言ったのだろう───。