泡沫の夢の中で、一寸先の幸せを。【完】





夜、ベッドの上に寝転んで天井を見上げる。


思い出すのは、海で出会った彼のこと。


綺麗な顔をしているのに、その表情は割とすぐ変わる。
真剣な眼差しだったり、緩い笑みを浮かべたり、飄々としていたり。

そしてこっちが恥ずかしくなってしまう程真っ直ぐな言葉をくれる彼はもしかしたらとんでもない貴重な少年なのではないかと思った。

凄く格好良い見た目をしていたし、女の子にも慣れていなそうではなかったけれど内面は物凄くピュアなのではないかと。
今どき一目惚れだって、綺麗だって初対面の人に言う高校生がいるだろうか?

いや、たぶんいないだろう。


「変わった子だけどなんか面白いな⋯」


彼のことを思い出すとつい楽しくなってしまうのは、私に友達がいないからだ。

諦めていた存在がすぐ傍に出来た事でワクワクしている。


だけどそれと同時にこの楽しい気持ちも今だけなのだろうと悲しくなる。

私は今日の事を忘れて、きっと彼も遅かれ早かれ私から離れていく。

来週、彼がまた私に会いに来てくれたとして、私はその時何て言うんだろう?

今日の事を覚えていない私に彼はどんな反応を示すんだろう?


ああ、来週も会いに来てなんて言わなけれよかった。今日で終わりにしておけば、こんなにも絶望感に駆られる事もなかったかもしれないのに。

この先は辛い事しか待ち受けていない。

そんな分かりきった事から目を逸らして彼と友達になってみたいと思ってしまった私は大馬鹿者なのかもしれない。